【セクハラ】に関係する法律、被害者を守る法律、加害者を罰する法律、事項等【まとめ】


セクハラ被害者を守る法律

セクハラを受けた被害者は、下記の法律に基づいて、賠償金を請求できる可能性があります。セクハラ被害者が加害者や会社に賠償請求できる法律は以下になります。


加害者に対して


不法行為(民法709条)

セクハラを行った人は、その違法行為に対する責任を負い、被害者に対して金銭的な賠償をすることになる可能性があります。


会社に対して


債務不履行責任(民法415条1項)

会社は従業員との雇用契約に基づき、快適な職場環境を提供する責任があります。セクハラが起きた場合、会社がこの職場環境整備の義務を果たしているかが問われます。この義務を怠ったと判断された際には、セクハラの被害者は、契約不履行による損害賠償を会社に請求することが可能です。


使用者責任(民法715条1項)

使用者(例えば会社)は、従業員が第三者に損害を与えた場合に、その賠償責任を負うことがあり、これを使用者責任と呼びます。セクハラの場合、被害者はこの使用者責任に基づき、会社に対して賠償を請求することができます。また、債務不履行責任と使用者責任は、法律的な構成は異なるものの、どちらも金銭的賠償の義務を伴います。法律構成の違いにより、一方が否定されても他方が適用される可能性があります。そのため、実際の法的対応では、債務不履行責任と使用者責任の両方を根拠に責任追及することが一般的です。


セクハラの加害者を処罰する法律

セクハラの行為が特に悪質な場合、直接の加害者が犯罪として訴追され、刑事罰を受ける可能性があります。ここで、セクハラが犯罪として認定される典型的なケースについて説明します。刑法では、懲役の最長期間を20年以下と定めています。そのため、強姦罪における法定刑は、最低5年から最高20年以下の懲役となります(2件以上の場合は最高30年以下)。このように、強姦罪にはセクハラに関連する犯罪の中でも特に厳しい刑罰が科されています。


強制わいせつ罪

強制わいせつとは、次の二つの状況に該当する行為を指します。まず、13歳以上の男女に対して、相手が反抗するのが非常に困難になるような暴行や脅迫を使って、その人の身体に直接、または衣服の上から触れること。そして、13歳未満の男女に対して、その人の身体に直接、または衣服の上から触れることです。


強制性交等罪(きょうせいせいこうとうざい)

強制性交等罪、かつて「強姦罪」と呼ばれていたもの、は以下の二つの行為を指します。一つは、13歳以上の人に対し、その人が反抗するのを極めて困難にする程度の暴行や脅迫を使って、強制的に性交等を行うこと。もう一つは、13歳未満の人と性交等を行うことです。ここでの「性交等」とは、性交、肛門性交、口腔性交を含みます。この犯罪は性別に関係なく、誰でも加害者にも被害者にもなり得ます。強姦に対する刑罰は、5年以上の懲役と定められています(刑法177条)。


時効について

立場 内容 時効
加害者 不法行為責任(民法709条) 損害及び加害者を知った時から3年
生命・身体を害する時は、損害及び加害者を知った時から5年
会社 使用者責任(民法715条1項) 権利を行使することができることを知った時から5年
会社 債務不履行責任(民法415条1項) 権利を行使することができることを知った時から5年
加害者 強制わいせつ罪(刑法176条) 行為が終わった時から7年
加害者 強制性交等罪(刑法177条) 行為が終わった時から10年


セクハラの防止を会社に義務付ける法律


男女雇用機会均等法第11条1項

(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
第十一条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。


【セクハラ】に関する厚生労働省の指針


①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

1.職場におけるセクハラの内容・職場におけるセクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
2.セクハラの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。


②相談(苦情含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

1.相談窓口をあらかじめ定め、周知すること。
2.相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また広く相談に対応すること。


③事後の迅速かつ適切な対応

1.事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
2.事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置を適正に行うこと。
3.再発防止に向けた措置を講ずること(事実が確認できなかった場合も同様)。


上記①~③までの措置と併せて講ずべき措置

1.相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
2.相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

指針の全文は以下のリンクをご覧ください。

なお、会社がセクハラ防止措置を怠った場合は、企業名が公表される場合もあります(男女雇用機会均等法30条)。


まとめ

セクハラが発生した際には、法律の適切な理解と対応が必要ですが、これがなければ問題の解決は難しいです。法律の内容は複雑で理解するのが難しい部分も多く、一般の方が独力で対処するのは大変です。セクハラに関する問題で困っている場合は、労働問題に精通した弁護士に相談するのがおすすめです。